たまにネット広告に流れていて気になっていた袈裟丸周造(けさまるしゅうぞう)の漫画「廃屋の住人」を購入してみたのでレビュー。紙媒体の単行本は2011年に発売されており、電子版は2017年2月に発売となっています。
最近のホラー漫画だとグロ要素、エグい要素などを織り交ぜて純粋なホラーが少なくなってきたように感じていましたが「廃屋の住人」はホラー要素のみで読者を引き付ける魅力のある漫画。
終盤にかけて徐々に怖さが増してくる。個人的にはテレビ放映される「世にも奇妙な物語」のような感覚を覚えたホラー漫画に仕上がっている。
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目次
袈裟丸周造のホラー漫画「廃屋の住人」あらすじ
この漫画は10話で成り立っており1巻で完結する。物語の主要人物は藤森まどか、まどかの息子:晃(こう)、まどかの従姉:健太、晃の同級生:かけいかずひと。そしてキーポイントになるのが藤森まどかのおじいちゃんだ。
大学生の健太は飲み会後、友人とある廃屋に興味本位で立ち寄ってしまう。そこから本来は見えない霊を見るように。
そして、まどかの息子:晃は事故死した「かけいかずひと」といった同級生の似顔絵を幼稚園で描いていた。
健太はある相談をしたく藤森まどかの元を訪れる。そこで健太の口から出た言葉は面識もないはずの「かけいかずひと」。しかし、健太の話を真面目に聞こうとした矢先、健太はまどかの家から出ていってしまう。また晃も不思議なことを言い出したり、絵を描いたり…徐々に二つの出来事が繋がっていき、まどかの身にも恐怖が訪れてくる。
袈裟丸周造のホラー漫画「廃屋の住人」ネタバレ
第1話:落書き
大学生の健太が興味本位で廃屋に立ち寄ってしまう。また幼稚園では晃が自分の似顔絵の横に同級生で事故死した「かけいかずひと」の似顔絵を描いていた。自宅に戻ると晃のカバンに入っていた落書き帳に車に子供が轢かれている絵が描かれているページをまどかが見つける。
晃の描く似顔絵が正直、ホラー。怖いよ。
第2話:かけいかずひと
まどかの従姉である大学生の健太が自宅に訪れる。まどかの家で何かを見て恐怖に怯える健太。そして健太の口から「かけいかずひと」といった言葉が飛び出して驚くまどか。健太はまどかに昔に聞いた廃屋に住む化け物の話の内容を聞きに来ていた。
健太に見えて、まどかに見えないといった描写がゾクッとする怖さを演出している。
第3話:ニアミス
鬼気迫る表情の健太に只事ではない感じを悟るまどか。健太を落ち着かせるために水を取りに行くが戻ってくると健太の姿は消えていた。同時に晃が幼稚園から帰宅。晃もまた自宅にいる何かに気づく。
3話ではじめて晃が登場する。歯が疼いて熱もあるようだ。
第4話:寄りたい所
熱で寝込む晃。翌日は回復。まどかが落書き帳の絵に運転手が描き足されていることに気づく。しかし、晃はずっと寝ており絵は描けないはず…まどかが寄りたい場所があるといって健太の住むアパートへ向かう。
淡々としているが恐怖を感じる話になっている。
第5話:あれ
健太の家には友人である沢村がいた。そして沢村から健太が失踪したことを聞くまどか。沢村も健太といった廃屋に入った一人。この二人の廃屋に入った時の描写が描かれる。何あの黒い物体…怖ぇぇぇーーーといった感じだ。
沢村も所々で変な言動をする。
最後に晃が自分の落書き帳に変な絵が描いてあるといって泣き叫ぶ。そう、あの車と子供の絵だ…
第6話:絵日記
卒園式。そこには「かけいかずひと」の母親が来ていた。藤森まどかは筧家に誘われてお茶をすることに。そこで見た「かけいかずひと」の絵は晃が描いた似顔絵、車の絵にそっくり。かずひとの母親からパステルセットをプレゼントされる晃。
帰り道、晃の発言は衝撃的だった。
まどか「和仁くんと幼稚園で一緒にお絵描きとかして遊んだんでしょ?」
晃「ううん、和仁くんと喋ったことないよ」
嘘ぉぉぉ〜といった感じ。仲良くなかったのかよ。といった感じだ。ここで読者の大半が信じていた晃と和仁=仲が良いといった図式が崩れ落ちる。
第7話:ともだち100人できるかな
不可思議な出来事の連続で不安になるまどかは実家へ電話して霊感の強かったおじぃちゃんのことを母親に聞く。夜中に目が覚める晃は隣の部屋である歌を口ずさむ声が聞こえ襖を開ける。そこには「かけいかずひと」が…目が合う二人。
第8話:空き家
晃が起きるとまどかは出掛けていた。晃はおばぁちゃんに不可思議な事を言う。「パステル、和仁くんが持って行っちゃった」。そう言って晃は一人でどこかへ出掛けていく。まどかはおばぁちゃんから晃のことを聞き、心当たりがあったのか筧家へ向かう。
筧家は引っ越ししたので誰もいない。鍵も開いている。部屋の奥へ進んでいくまどか。そこで貰ったはずのパステルに気づく。
散乱しているパステルを直して部屋を出ようとすると隣部屋に黒い影が…妙な気配に感づくまどか。
この黒い影はまどかの従姉である健太と友人が見た物体と同じ。一体何を形取っているのかは結末に向かうに従い判明する。
第9話:シンクロ
まどかのおじぃちゃんが昔語っていた「廃屋の化け物」の話の全貌が明らかになる。
まどかは隣部屋に目をやると黒い影と幼稚園生が立っていた。そう「かけいかずひと」だ。立ちすくんで黒い影と幼稚園生を凝視してしまうまどか。すると背後から声が…「まどか、あんまし見ると向こうへ連れていかれっぞ」。
次の瞬間、晃がまどかの前に立っており、手を引っ張って筧家の外へ連れ出す。気がつくと外。電話が鳴る。おばぁちゃんだ。晃は家に戻っており熱が出て大変といった連絡を受ける。急いで自宅へ戻るまどか。しかし、かけいかずひとの事故現場には道路の真ん中で幼稚園生が立っていた…
いよいよ、佳境。
不気味さが増してくる。
第10話:Swallow and Disappear
最後、道路に立っているのは「かけいかずひと」。
まどかの運転する車が勝手に動き出して「かけいかずひと」へ突進しようとしている。
自宅では晃が目覚め、手にはパステルが握られていた。まどかの前に立ちはだかる「かけいかずひと」。はじめて顔が描写される。怖ぇぇぇーーーー。同時に黒い影の正体も。そういうことか!といった感じ。まさに恐怖。
晃が持っているパステルで車の絵を塗りつぶす。まどかの前にいた「かけいかずひと」も消える…
最後は謎が謎を呼ぶような展開。
袈裟丸周造のホラー漫画「廃屋の住人」感想
かなり面白かった。
昨今では人気のグロ要素、エグい要素などはなく純粋にホラー要素だけで勝負している漫画。派手さはないが妙な怖さがある。
ただ、全ての謎が解決されないまま、この漫画は幕を閉じる。随所に残る「謎」に関しては各人で考えて楽しんでね!といった感じなのだろう。スッキリと終わるわけではないが読後感が悪いわけではない。むしろホラー漫画なので謎を残したまま終わってくれた方が俄然、怖さが増す。最初にも述べたがこの終わり方が「世にも奇妙な物語」のような感覚を覚えたのだ。
ちなみに自分の中で残った謎としてはまどかの従姉である健太の行方。そして「かけいかずひと」は何故、晃の前に現れたのか?…時折、まどかに助言する人物。といった謎だ。
恐らく健太は廃屋に飲み込まれた。と考える。
かけいかずひとが晃の前に現れたのは生前から友達になりたかった。もしくは霊感が強いので自分を見つけてくれるから。なのかなぁ〜と捉えた。まどかに助言する人物は間違いなく、まどかのおじぃちゃんだろう。
この辺りは解明されないので個人の見解によって変わってくると思う。
読み終わった後も考える楽しさを与えてくれる漫画「廃屋の住人」。グロ、エグい要素のない本当のホラー漫画を求める人におすすめしたい漫画だ。
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