ルサンチマン(4)
作者 花沢健吾
出版社 小学館
ジャンル 青年漫画
えー、4巻で重要なのはこの「表紙」である。表紙の絵が、重要な意味を持っている。伏線として。どう重要なのかは、これから解説させていただく。
漫画「ルサンチマン」4巻のあらすじ
まず冒頭。拓郎と月子は(ネット上の空間の中で)愛欲に溺れる日々を送っている。だがその生活は、やがて破綻する。
どういう流れで破綻するかというと、なんと拓郎が現実世界で恋人を作るのである。名前はまりあ。会社の同僚である。前に一度フラれているその相手だが、なんだかんだで結局くっついてしまうのだ。
ネット上の空間にひとりほったらかしにされる月子の前に、「江原」と名乗るPCが現れる。なんだか、帝国とか総帥とかいって、多くの人間を率いている存在である。彼は、ノアやムーンの秘密を知っており、偶然に手に入れた情報から月子がムーンである事実を突き止め、月子を利用して、ネット空間からサイバーテロを起こし、世界を破滅に追い込もうとする。
で、アメリカ軍のネットワークに月子を侵入させて、核兵器のコントロールシステムを乗っ取ろうとするのだが……。
3巻はこちら
漫画「ルサンチマン」4巻のネタバレ
再び冒頭。拓郎は愛欲に溺れて具体的にどうしているかというと仕事をサボっている。
いちおう有給を使ってはいるので、首の皮一枚繋がることは繋がるが、危うい状況である。仕事に復帰したところで、まりあが徹夜仕事を持ってくる。なにやらクレーム対応でトラブルでどうこうという話である。サボっていた負い目があるので、拓郎はそれを一人で引き受けることにするのだが、その流れで、まりあといい雰囲気になり、一線を越えてしまうのである。
なお、まりあはこれ以前から拓郎と友人付き合いがあるので、月子のことは知っている。知った上で対抗意識を燃やしている。
ここからは劇的な展開が続く。実はムーンであるところの月子の正体を、江原が察知し、それを利用しようと接近してくる。江原には仲間がたくさんいるが、それはあまり重要ではない。
説明される順番としては前後しているが、江原の正体を書いてしまうと、彼は実は月子と同じ、ノアの分体の一つであり、そして、ノアの情報を持って生命体として現実世界に創り出された実験動物である。その正体は、サルであり、檻の中に入れられて生きている。年齢は6歳。サルでありながら、パソコンを操り、VR空間に入ってくる能力を持つ。
江原は人間社会に憎しみを抱いており、世界を滅ぼすつもりでいる。月子は「電脳空間に偽の拓郎を創り出し、それと共に暮らす、本物の拓郎には死んでもらう」というつもりでいる。で、アメリカにハッキングである。
だが相手は国家アメリカの中枢である。
結果をいえばハッキングは失敗し、逆にウィルスを仕掛けられた月子は崩壊を始める。それをなんとか助けようと駆け寄る拓郎であるが、神崎の友人のハッカー(このVR世界の創始者のひとり。実は以前、ドクターとして登場している)によれば、助ける手段は一つしかないという。それは、この月子はDNA情報に相当する生体情報を持っているので、人間としてこの世に産み出す、という方法である。それを、まりあが引き受ける。月子の母親になることを。
そして最終幕。一気に未来まで時代が飛ぶ。
色々あって拓郎は印刷会社を首になり、実家を継いで弁当屋をやっている。そこに、ただの偶然の通りすがりの来客として、月子がやってくるのである。拓郎はそれを見て涙を流す。そのシーンで作品自体は終わる。だが、ここで、伏線が生きてくる。それが表紙である。表紙に描かれているこの一枚の絵こそが、本当のラストシーンである、というわけだ。
漫画「ルサンチマン」4巻の感想
ストーリーについては十分に説明したのでもう言うことはないが、とにかく、ぐぬぬと唸らされる作品であった。
使われている構成要素そのものは、SF的にはそう珍しくないものが多いといえば、多い。だが、この一本の作品にそれらをまとめ上げた力量については、見事と言うほかはない。
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