重い作品だ……
正直、読んでいる間ずっとその想いがまとわりついていた。
- 作品名:セブンティウイザン(1)
- 作者・著者:タイム涼介
- 出版社:新潮社
- ジャンル:青年マンガ
漫画「セブンティウイザン」1巻のあらすじ
夫は65歳、妻は70歳。定年退職の直後に、江月朝一は体調を崩して病院に行っていた妻から告げられる。「妊娠しました」と。
朝一は戸惑う。それはもう見ていられないほど取り乱す。「俺の子か?」などと益体もないことを言い出して怒られたりする(なお、当然のことではあるがこの年で、夫婦生活があったという設定になっている)。ずっと子供を欲しがっていた妻、夕子の決意は固く、結局、産むことになる。
胎児の経過は一貫して順調なのだが、この年で初産なのだから、父親も母親も大変である。妊婦向けの雑誌を読み始めたり、なんだか教室のようなものに通ってみたり、色々だ。
ちなみに自然分娩はさすがに無理であるということで、医師が帝王切開しかないと告げ、手術の日取りが滞りなく組まれる。そして……。
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漫画「セブンティウイザン」1巻のネタバレ
いよいよ手術の日。長い長い、回想シーンやらなんやらの、色々な描写の末に……
読んでる方はこのあたり、本当にドッキドキだったんですが……
子供は無事に生まれました。
冷静に考えると、2巻が刊行されていることは知っていた以上、「残念ながら……」ということになって物語が終わってしまうわけはないのだが、それでも読んでいてドッキドキであった。
人が死んだりなんだりする漫画なんてものは珍しくもないはずであり、漫画の筋なんてものはだいたい予定調和的に進むと分かっているはずなのだが、漫画を読んでいてこんなに先の展開にビビッてドキドキしたのは本当に久しぶりだと思う。
漫画「セブンティウイザン」1巻の感想
いちおう、調べてみた。作中にも出てくるが、70歳で出産したという実例が存在することはする。
ただし、これも作中に書かれているが、体外受精である。自然妊娠となると、60歳を過ぎた事例は、少なくとも現代医学の研究範囲においては、知られていない。よって、『旧約聖書』(知らない方もおられようと思うので軽く説明するが、旧約聖書には老婆が妊娠するというエピソードが存在する)でも持ち出さない限り、70歳で妊娠は、無い。よってこの物語はファンタジーである。ファンタジーであるはずなのだ。
しかしそれなのに、胸に迫るこのある種の「リアリティ」は一体、何なのだろうか。
心情描写が、丹念なのである。それはもう。
ところで、作者タイム涼介。ずっと以前のことになるが、コミックビームという雑誌で連載を持っていた頃(『あしたの弱音』、『アベックパンチ』などの作品)、リアルタイムで購読していたので知っている作家である。
正直なところ、画風がかなり変わっているので驚いた。似たような名前の別人ではないかと思ったくらいだが、調べると同じタイム涼介氏である。
昔から、コミカルな絵柄で行間にメランコリーを込めるのがうまい作家ではあったが、知らないうちに随分ストーリーテラーとして成長したように思う。上から目線でなんだが。
さて。
冒頭で、重い作品だ、と書いた。
何が重いのか。
それは、命、というものと向き合う姿勢の重さだ。
物語開始時点では既にこの世に無いのだが、老夫妻は以前、オードリーという小型犬を飼っていた、という設定があり、その回想などが頻繁に挿入される。
老いたる身で親になるということの責務の重さ。
それでも親になると誓う、決意の重さ。
それがこの作品の重さである。
ところで、1巻を読み終えた時点で2巻をあえて読まずにこの記事を書こうと思っていたのだが、ちょっと精神的に耐えられなくて2巻の一番最後の部分だけ見てきてしまった。
まず大前提として、3巻に続く、となっている。
つまり2巻で悲劇的なことになって終ったりはしないらしい。心底安堵した。
馬鹿なことをやっていると思われるかもしれないが、それくらいこの1巻は、読み手の不安を煽る作品となっているのである。
セブンティウイザン
その日、江月朝一(65歳)は定年退職を迎えた。家に帰ると妻、夕子(70歳)から信じられない事実を告げられる。「私、妊娠しました」。終活、そんな言葉もよぎる夫婦が、突然授かった大きすぎる未来。超高齢出産夫婦がおりなす全く新しい家族の物語が始まる。夫婦の愛に、あなたもきっと涙する。
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